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京都市・乗継割引廃止


4月1日に実施された乗継割引の廃止は,バス混雑の解決策にはならない。例えば京都駅から金閣寺まで行く場合に,北大路からバスに乗換えると,260円+230円=490円になる。従来は紙の乗車券で120円,交通系ICカードで60円の割引が入って370円~430円だったが,4月以降は無割引になった。バス205系統で230円の区間に,乗換の手間を伴う上に倍以上(490円)支払うincentiveは働かない。

バス地下鉄連絡乗車券は,地下鉄→バス方向は券売機で対応できたが,バス→地下鉄方向は事前購入した紙の1区引換券を券売機に投入し,差額精算を要するなど手間が掛った。1981年5月の地下鉄開業と同時に導入され,当初は合算運賃から60円引だったので,バス運賃130円+地下鉄1区運賃120円が190円になった。画像は270円のバス・地下鉄連絡券だが,89年の消費税導入期の券のようだ。

京都市における交通系ICカードの導入は2014年12月だったが,カード利用の場合には乗継割引(60円)が自動適用されるようになる。合算運賃は250円→440円に76%も上昇したが,割引額は60円固定で「お得感」は損なわれる一方だったので,19年3月に割引額が60円→120円に拡大された。この結果,連絡券の値下げという珍しい事態が発生したが,ICカード利用の割引額は60円に存置された。今回全ての割引運賃を廃止し,ポイント制に移行することになったが,ICOCA, PiTaPa限定で,事前登録が必要かつ暦月に3600円以上利用した場合のみという適用条件は厳しすぎる。

観光客はほぼ完全に割引対象から排除されるが,対市民サービスを維持すれば,市民以外の反感を買おうと地方議員の選挙には影響しないという,一種のVoting Jurisdiction問題になっていて,1980年代後半の「古都保存協力税」を想起させる。古都保存協力税の場合には,京都仏教会という強力な圧力団体があったが,属性もバラバラな観光客では反対運動が組織されることはない。しかし地下鉄に乗らずにバスに乗るという行動で反対を示すことはできる。

日本では交通機関ごとの運賃収受が一般的だが煩雑極まりなく,交通費用が高くなる原因ともなっている。欧米では都市内交通はソーン制運賃や時間制運賃の採用が多く,乗換運賃(transfer)は不要になる。ICカード導入により時間管理が容易になるため,San Francisco MUNIのように90分以内乗換自由で$3.00と言った設定が一般化しつつある。その意味では,廃止されたバス・バス乗継が最初の降車から次の降車まで90分以内で90円割引とされていたことは,ICカードの正しい利用方法だったと言える。
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京都の仏教系大学・高校

18歳人口の減少により,大学はどこも学生確保に困難を来している。いわゆる有名私学(たとえば早慶上理・GMARCH・関関同立の14校)を見ると,キリスト教系の大学が上智・青山・立教・関西学院・同志社の5校含まれるが,日本は仏教徒が多いはずにも拘らず,仏教系の大学は含まれない。

京都は仏教系学校の多い土地柄であるが,仏教系大学・高校を宗派別に整理すると以下のようである。最も系列校が多いのは浄土宗系であり,京都文教大学・高校以外はすべて(学)佛教教育学園と称する単一法人により運営されている。このうち真宗本願寺派(西本願寺)系の学校評価が比較的高いように見受けられる。

宗派大学1大学2高校1高校2
真言宗種智院大学嵯峨美術大学洛南高校
浄土宗佛教大学京都華頂大学(女子)
京都文教大学
東山高校(男子)華頂女子高校
京都文教高校
真宗本願寺派龍谷大学京都女子大学龍谷大平安高校京都女子高校
真宗大谷派大谷大学京都光華女子大学大谷高校京都光華高校(女子)
臨済宗花園大学花園高校

学校名に「女子」を含まないが,女子校である校名には(女子)を注記している。高校1は現在も男子校である東山を除いて,何れも元の男子校を共学化。高校2は基本的に女子校であり,京都文教高校(旧・家政学園高校)のみ共学化されている。共学化は,短大の4年制大学化と並んで,定員確保のための全国的な趨勢であるが,潜在的な志願者集団が増える訳ではないので,全部の学校が同じことをすれば,結局定員の充足は困難になる。

高校については,既に義務教育化しているため,共学化による定員確保は短期的なものでしかないが,大学については2022年の進学率は50%強であり,まだ伸び代があるとされる。ただ実際には「進学率」の定義は難しく,分子・分母に何を取るかは様々な考え方がある。例えば飛び級で入学する人も,1度社会に出てから入学する人も居るので,分母を18~20歳に取ると過小評価になる可能性があり,分子に留学生を加えると100%を超える国も出てくる。さらに「高等教育」に職業専門学校等,高校卒業後に入学する大学以外の教育機関を加えることも可能である。生涯教育という観点から,65歳時点の最終学歴を調べることはある意味公平だが,それでは教育政策の効果を直ちに評価することはできない。

下表は,(独)労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2023」に掲載されている,OECD諸国の高等教育の教育段階別進学率(2020)である。UNESCOが定める"International Standard Classification of Education" (ISCED)で言えば,レベル6(学士課程)がいわゆる「大学進学率」に相当する。よく比較される韓国であるが,この表では66%なので,日本の現状と比べればまだ15%位は伸びる余地があると見ることもできるが,分母となる同世代人口が減少するので,入学者数の増加に過大な期待は持てない。(なおこの表の元データはOECDの"Education at a Glance 2022"とされるが,下のデータを直接掲載する表は見当たらない。またOECDでは,入学率には"Enrolment rates"を用いる。)

Table 8-1-2 Enrolment rates to tertiary education

Sihanoukville, KH

Golden Lions, Sihanoukville, KH
Sihanoukville中心部のroundaboutに佇む"Golden Lion像"。現在は中国資本による開発が進み,ビルに囲まれているが,写真の時点では殆ど何もない交差点だった。昨年11月には中国の援助による高速道路が開通し,Phnon Penhと2時間半余で結ばれるようになった由だが,当時は国道4号経由で6時間くらい掛った印象がある。Kompong Som湾に面した,Cambodia唯一にして最大の港湾都市は,特殊詐欺の海外拠点として脚光を浴びることになった。

Sihanoukville Port Area, 2007
20年に及んだ内戦は,1991年10月23日の「パリ平和協定」調印により一応の終結を見た為,翌年から国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)による秩序回復が図られ,自衛隊も戦後初の海外派遣としてPKOに参画した。内戦中に疲弊したインフラでは,国際物流の急速なコンテナ化に対応できないため,JICAとしても2004年のシハヌークヴィル港緊急拡張事業等を通じて継続的な関与を続けている。写真は国道4号から港湾地帯を望んだものだが,2007年時点では,ガントリークレーン数基が見える程度で,後背地の整備はまだ始まったばかりだった。(2007.8.13)

新幹線試験車両

E956-10 (Alfa-X)
2019年に登場した新幹線試験車両"ALFA-X"の新青森方先頭車E956-10。札幌延長時に計画される360km/h運転の試験車で,当初は仙台~新青森間で夜間試験を繰り返していたが,22年度に入って昼間に見掛けるようになった。先代の試験車両と同じく,東京方と新青森方で先頭形状が大きく異なり,写真の10号車は鼻部分が22mと極端に長く,普通車定員は僅か15名に限られる。(2022.11.30)

Fastech E954-8
仙台駅に停車する先代の試験車両"Fastech"の八戸方先頭車E954-8を再掲する。E954系は05年に完成し4年間試験に供されたが,試験終了に伴って09年に廃車・解体されたので,その一生は4年に過ぎなかった。その意味ではE956系もそろそろ寿命が近づきつつあるかも知れない。(2008.3.18)

熊本交通センター(3)

Kumamoto Transit Center, 2016
1969年3月から46年半に渡り熊本県の公共交通の中心であった熊本交通センターは,2015年9月末日に再開発のため閉鎖され,翌日から東側の市道(行幸坂へつながるシンボルロード)を閉鎖して仮バスターミナルとしての供用が始まった。引き続き熊本交通センターの名称が使われたが,乗り場は市電通りを含めて分散を余儀なくされた。写真は熊本地震後の2016年12月の状況だが,耐震性の見直しや復旧工事の関連で事業完了は約1年半遅れることになった。

Sakuramachi BT, 2023
桜町地区市街地再開発事業の完了に伴い,バスターミナルは19年9月に再開発ビルの1階に復帰した。規模は従前の36バースから29バース(うち10バースは降車専用)に縮小され,また出入路も東側が無くなり南北2ヶ所となったが,復帰に際して「桜町バスターミナル」という新名称が付与された。写真はかつて仮バスターミナルに使用されていたシンボルロードの辛島公園側からの現況である。(2023.2.28)

「バスタ新宿」以降,各地で国交省肝いりのバスタプロジェクトが進められているが,熊本に関してはこの枠組みには含まれていない。

地図記号の変化

Map symbols related to military facilities.
国土地理院の地図記号も時代と共に変化している。近年では,2006年から老人ホームや風車等の記号が導入された一方,13年から1:25000地形図では都道府県庁や工場の記号が使われなくなっている。国土地理院の前身である陸地測量部は陸軍省の機関であったこともあり,戦前までは上のような軍隊関係の地図記号が細かく定義されていた。管轄地や兵営の記号で見ると,陸軍は1本線,海軍は2本線で区別されていて,戦後も陸・海・空の区別が引継がれたが,65年以降,旗に横太線1本に共通化されている。

Sasebo Naval Base, 1924-27.
上は佐世保鎮守府周辺の1:25000地形図(部分;1924年測量,27年発行)である。この頃になると皇室関係と軍事施設の地物は秘匿され,白地になっている。今日では,衛星画像等で容易に観察できるため隠す意味は無いが,これは「敵」というより国民の目に触れさせないことが目的だったのだろう。鉄道駅でも京阪の「師団前」や名鉄の「二連隊前」は,戦中に「防諜の観点から」それぞれ「藤森」や「名電各務原」に改名されているが,如何にも小役人が考えそうなことだ。「秘密保護法」の適用範囲をなし崩しに拡大して,国民の監視が届かないようにすることが,国家の安全に寄与するとは思えない。

湯野上温泉駅

Yunokami Onsen Station, Aizu Railway
会津鉄道・湯野上温泉駅。茅葺屋根の駅舎が有名だが,かつては一般的な木造トタン屋根の駅舎で,現在の駅舎は第3セクター移管に伴って1987年に建て替えられた。2面2線の千鳥配置ホームを持つ交換可能駅で,委託駅であるためホームへは入場券が必要だが,併設の足湯は無料。

Ohuchi-juku, a preservation district for groups of traditional buildings
駅舎が茅葺に建て替えられた理由は,歴史的建造物群保存地区に指定されている会津西街道・大内宿の最寄駅だからだろう。昔はもっと混雑していた印象があるが,お馴染みの撮影ポイントから見た大内宿は,夏休み中にも拘らずコロナ禍で閑散としていた。(2022.8.2)

Istanbul Airport (IST)

Istanbul airport concourse
現在のIstanbul空港は,トルコ航空のハブ空港として2018年10月に開港した新しい国際空港である。前述のように5本の滑走路を持つが,旅客ターミナルは現時点では1棟に集約されていて,コンコースは必然的に巨大なものとなる。開港から1年も経たない真新しいターミナルの深夜の状況。

IST departure schedule
2019年9月5日朝の出発便。一番左側はトルコ語表示だが,上から6行目,TK8816便Kyiv行はfinal callが出ている。他にもPS(=ウクライナ国際航空)9557便Kyiv行,TK0471便Herson行が表示されている。さらに右側の面にはLviv行やOdesa行など,現状では復便には程遠いウクライナ国内の行先が散見される。

Istanbul airport at dawn
夜が明けて来たIstanbul空港Bフィンガー西側の情景。早く平和な日常が戻ることに期待したい。

女川駅

Track 1 of Onagawa Station.
石巻線女川駅は2011年3月の東日本大震災時に津波で全壊し,路線も長期間に渡って不通となったが,2015年3月の浦宿~女川間の復旧を以て再開された。ただし路線は約200mカットバックされ,高台に移転している。旧女川駅は1面2線と機回し線を有したが,復旧後は1面1線の棒線駅となり,渡波~女川間8.8kmには1列車しか入線できない。信号機の設置もないが,なぜか乗り場には1番線の表記があり,ホームの反対側にはもう1線敷設可能なスペースが用意されている。写真は女川駅に到着したキハ111+キハ112(仙ココ)の2連。

Onagawa Station houses the hot bath facility, Yupoppo.
新しい女川駅から海へ向かうレンガ道を含むシンボル空間は,2019年度の土木学会デザイン賞最優秀賞を受賞している。旧女川駅には,ゆぽっぽと称する町営の温浴施設が隣接していたが,現駅も同名の温浴施設と合築されている(運営は指定管理者)。ただし2021年5月1日の地震による被災で,今もって休業中である。下の表は,21年以降のこの地域におけるマグニチュード6.5以上の地震の一覧である。全般的な被害としては,21年2月13日と22年3月16日の地震が大きかったが,女川町では21年5月1日の震度が2月13日のそれより大きかったことが分る。しかし22年3月16日の地震被害はそれより大きかったと推察されるため,コロナの影響もあって復旧はなかなか難しそうだ。(2016.5.28)

発生日時マグニチュード震源最大震度女川町震度
2021.2.13, 23:08M7.3福島県沖6強4
2021.3.20, 18:09M6.9宮城県沖5強4
2021.5.1, 18:09M6.8宮城県沖5強5弱
2022.3.16, 23:36M7.4福島県沖6強5強

「所得代替率」

年金財政検証は5年ごとの実施が義務付けられ(国民年金法),前回は2019年に実施されたが,公表は参議院選挙後の8月27日まで遅れたため,選挙の「争点隠し」だと批判されたことは記憶に新しい。そこで最も重視される指標が「所得代替率」だが,これはモデル世帯における年金支給額(名目)を標準的現役世代の可処分所得で割ったものとして定義される。分母としては「現役男子の平均手取り収入額」として月額35.7万円が用いられているが,その統計的根拠は明確でない。社会保険審議会年金部会に提出された資料によれば,その前段階の「現役男子の平均賃金」として月額43.9万円が想定されている。

年収で言えば,前者が428.4万円,後者が526.8万円となるから,実効税率は18.7%になる。総務省統計局の「全国家計構造調査」では,可処分所得を「年間粗所得(参考:OECD新基準準拠)」-「所得に課される税・社会保険料」-「固定資産税・都市計画税」-「自動車税・軽自動車税・自動車重量税」と定義している。財政検証が想定する可処分所得では,個人差が大きい固定資産税や自動車税は考慮されていないと思われるが,大和総研の試算では,2017年の2人以上の勤労者世帯の社会保険料を含めた負担率は25.7%と推計されており,実際の可処分所得はもっと少ないと考えられる。さらにガソリン税・消費税等の間接税相当額は控除されないため,実際の税負担はもっと大きいことに注意する必要がある。

政府が出す数値は,分子が名目収入で分母が可処分所得,という奇妙な算定方法に基づく。本来所得代替率は名目収入同士(Y2/Y1),または可処分所得同士((Y2-T2)/(Y1-T1))で比較・算出されるべきだが,ここでは(Y2/(Y1-T1))を計算していることになり,政府基準の所得代替率は数値の粉飾に他ならない。筆者の例では,Y2-T2=年金支給額249-所得・住民税12-国保・介保24=213万円(2021年)となるから,政府基準の所得代替率は58.1%となるが,名目基準だと47.3%。可処分基準だと49.7%にしかならない。

政府公式の所得代替率61.7%は,勤労者1名と専業主婦の「モデル世帯」に基づくものだが,現代では少数派に過ぎず実態を表すものとは言えない。20年国勢調査による生涯未婚率は,男28.3%,女17.8%(社人研による不詳補完値)となっていることもあり,今後は第3種被保険者の見直しを含めて,年金を個人単位に組み替えることで公平性を担保すべきだろう(低年金者に対する公正性の問題は,最低保障の観点から別途考慮が必要)。さらに賃金データ算出の元になる「毎月勤労統計調査」でも,04年以降19年5月に至るまで,全数調査をサンプリングに置き換える「統計不正」が行われていたことを考えると,政府算出の指標自体の信頼性は損なわれており,年金に対する国民の信頼を取り戻す道筋は遠いように見える。